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地域の皆様に必要とされる企業へ 〜株式会社 宗重商店〜


地域の皆様に必要とされる企業へ

解体事業を中心に、近年では県内外を問わず様々なビジネスを展開する宗重商店。これまでの業界のイメージを覆す戦略を次々と打ち出し続ける代表取締役 宗守重泰氏に、会社経営の秘訣やご苦労をお伺いしました。

代表取締役の宗守 重泰 氏

解体業からサービス業へ

会社創業が昭和14年と、今年で80有余年の歴史をお持ちです。まずは創業時のお話を伺えますでしょうか?

祖父、德太郎が建築物を解体した際に、柱や梁をそのまま別の新しい建物に再利用する「生かし解体」を始めたことが起点となります。現在でもそれら建築物は各地に残っており、当時のお客様にお声をかけていただくことがありますね。ただその後の高度経済成長の時代に入ると、海外から安い資材が輸入されるようになったことで次第に再利用の需要が減り、解体業を中心とする業態へ移行するようになりました。

その後、社会や経済は大きな変動を見せます。宗守社長が入社された当時はどのような状況だったのでしょうか?

大学卒業後はデパートに3年ほど勤めていたのですが、2代目である父親が体調を崩したこともあり、いわゆる番頭のような形で家業に就きました。ただし解体業に関する知識は全くなく、社員も解体作業員が5人のみ。また負債も多く抱えており危機的な状況にありました。とにかく仕事を取ってくることを求められ、過去の見積りを見直したり、同業他社に出向いてノウハウを請うなど、しばらくは見様見真似で取り組みました。

そういった会社再建の中で、特に重要視されたことは何でしょうか?

それまで勤めていたデパート業界とは仕事に対する意識や常識が全く異なっており、また世間一般的にも解体業に対する印象は非常に悪かったと思います。まずはそのイメージを払拭したかったですね。重機を扱う作業はかなりの危険を伴いますが、その分ルールを守り、人としてのマナーを備えた作業員はスマートに映るかと思います。そういった解体業が本来持つ 「カッコよさ」を目指し、社員教育や経営方針を打ち出していきました。それまでの業界の常識とは異なる、自分の経験を活かしたサービス業への転換、融合と言えるかと思います。

 

新しいむねじゅうを目指して

ホームページを拝見しても、むねじゅうランドやキャラクター「ムネちゃん」など、柔らかく、可愛らしい印象を受けます。

それも会社のイメージを変えていきたい思いから生まれたものです。女性や子ども達を含め、やはり地域の皆さんに愛される企業でありたいですね。ただ一方で解体業者としての矜持を保つ意味で、「解体道」というブランディングも2年前から行っており、今後は業界全体としてのイメージアップも図っていきたいと思っています。

解体業のブランド化

親しみやすくデザインされた広報物

その他にも、リサイクルや不要品、また近年では海外への輸出や幼児教育などの新規分野にも力を入れていらっしゃるとお聞きしました。

企業として柱を何本も持つことはもちろん大事ですが、基本的には地域の皆様のお役に立ちたいという考えから始まったものばかりです。建物や土地に関わる仕事をしていれば、それに関するお悩みや相談事をいただくこともあり、それらの解決に一翼を担わせていただいています。また日本で発生する古物品も海外では十分に高い価値を持つことが多く、それを輸出することで再利用を図っています。幼児教育に関しても、ご縁があり、高い理想をもって教育事業に挑みたいとのことでそのお手伝いをさせていただきましたが、お陰様でいずれも順調に推移しています。

宗守社長のそういった事業展開は、「第3回スタ★アトピッチJapan」の中でも高く評価され、中部ブロックの代表として決勝大会に出場されたそうですね。

※スタ★アトピッチJapan
創業10年程度、もしくは家業を継いだ経営者が、それぞれの独自事業モデルを発表し、事業の強みや社会貢献性などを審査員にアピールする。第3回大会では参加した400社のうち、各ブロック予選を勝ち抜いた20社の経営者らが登壇している。
「第3回 スタ★アトピッチJapan」決勝大会 アーカイブ

私がその大会の中でアピールしたのは「Reをクリエイトする」ということです。そもそもは不動産業者から相談を受けたことなのですが、引っ越しなどの際に出る残置物は不法投棄などにつながることもあり、社会問題の1つとなっていました。中には十分に使用できるものもあり、もったいないですよね。そこで弊社では会社が持つ機能を活かし、それらの面倒な片付けから分別、処理、買取までをワンストップで引き受けています。これまで廃棄にかかっていた費用なども軽減され、逆に利益に転換される利点も出てきました。

環境保全やSDGsの側面からも大きな効果が望めそうです。

科学の進歩とともにモノを大切していた時代からモノを簡単に捨てる時代へと変わってきたことに、私は大きな危機感を感じています。これまで宗重は3つのR(ReduceReuseRecycle)を基本としてきましたが、これからはRenewalRenovationReborn などを加え、たくさんのRをメインとする企業、「Reをクリエイトする」企業でありたいと考えています。

事業の枠が広がる中で社員の人数も現在では70名を超えました。いろいろとご苦労もお有りではないでしょうか?

社員の数が増えてくると評価基準などを明確にする必要があるため、社員には「社員手帳」を作り配布しています。その手帳には身だしなみなどの基本的なことから、評価を公平に受けるためのスキルマップや給料の査定基準なども明記されています。また経営指針書においては会社のビジョンや目標数値を明確に表記し、皆が公平且つ目標をもって仕事に取り組めるような環境づくりに努めています。

社員の疑問を解決してくれる社員手帳。図や写真を使い、わかりやすくまとめられている。

 

100年企業を見据えて

ここ数年のコロナ禍による影響はいかがだったでしょうか?

2年前はやはり売上に影響が出ましたが、昨年と比較しても本年は回復傾向にあります。ただ数字的なことよりも、社員旅行などのイベントが中止になったことは大きな痛手だったと思います。楽しく働ける会社の雰囲気、風土作りを重視する私たちにとって、社員が誰と働くかという観点は非常に大切です。そういった意味で社員同士の交流の機会がなくなってしまったのは残念ですね。

それは確かに大切なことですね。

ただ同時に、対面の機会が奪われたことでスマートフォンなどを利用した社内のIT化、情報共有化はこの2年で一気に進みました。遠く離れた事業所との連絡も密になり、無駄やロスがなくなったと思います。それは良かったのですが、でもやはり社員の皆と一緒に飲みにいく機会も欲しいですね(笑)

そろそろ100年企業も視野に入ってきた頃かと思います。最後に今後のビジョンなどをご教示願えますか?

今後、企業はより高いコンプライアンスが求められ、世界は循環型社会へと移行しています。そういった意味で、弊社はその潮流に上手く乗っているのかもしれません。 形あるものはいずれ廃れていきますが、創業当時からの「モノを大切にする」という概念を忘れず、それを次の資源へと繋いでいくことを社命としていきたいと思います。これから先も、時代にそして地域の皆様に必要とされる「困ったときのむねじゅう」と声をかけていただける企業でありたいですね。

 

株式会社 宗重商店
住 所:石川県金沢市畝田西1丁目112番地
電 話:076−266−6000
FAX:076−266−6161
URL:https://www.munejyu.com/
創 業:昭和14年3月1日
社員数:78名

事業内容
解体事業、リサイクル事業、不要品事業、リユース事業、海外事業、幼児教育事業、協同組合事業、不動産事業、仮設事業

 

 

(取材・文=久保直樹)